コーヒー豆のグレード・格付け、認証とブランド
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先日、私が住んでいるエリアの学校でPTAの方々向けにコーヒー講座をさせて頂く機会に恵まれて実施してきました。
そのような場所なので、当店のご紹介ではなく、コーヒーとは?という視点でなるべく公平かつ網羅的な内容となるよう心掛けていたのですがこれがなかなか難しくて。
それでも、知識と味覚は直結していますので、ご参加頂いた皆様のコーヒーライフがより美味しく楽しくなるように、限られた時間にギュッと詰め込んできました。
私にとっても改めてコーヒーについて整理するきっかけとなり、またそれをご紹介していく必要性を強く感じた時間でした。
さてタイトルにあります本題ですが、一つのブログ記事にまとめるのは余りにも広く深いテーマなので、今回は概要のみとします。
これまでは専門性の強いと思われる情報についてのアウトプットは必要最小限にして、なるべく受け止めやすい、親しみやすい形でコーヒーをご紹介したいというスタンスでした。
その基本姿勢に変わりはありませんが、その上で今後はブログ等のコンテンツとして、少しマニアックなウンチク的な情報についても触れていこうと思っております。
独断と偏見を含むかもしれない私の解釈を入れつつ、コーヒー豆屋の親父の呟きとして不定期に投稿していきたいと思います。
コーヒーについての知識を得ることは、コーヒーの味わいを深めることに繋がります。
挽きたてのコーヒーをドリップし、ゆっくりと味わいながら、ご笑覧くださいませ。
また、当店で取り扱うスペシャルティーコーヒーについてのこちらのページも併せてご参照ください。
【各国独自の格付け】
コーヒー豆は各産地の輸出品目として重要な農産物です。それ故に、各国では独自の品質基準を設け、コーヒー豆の等級付けすることにより、その品質と流通の適正化に努めています。
ブラジル
世界最大のコーヒー産出国であるブラジルでは、スクリーンといわれるメッシュによってS20,S19,S18~S12といったコーヒー豆の大きさを選別、欠点豆の数、カップテストにより格付けしています。
グアテマラ
中南米の名産地であるグアテマラではどうかというと、産地の標高によってグレーディングされています。SHB,HB,SH,,,のような順です。SHBは"ストリクトリーハードビーンズ"のイニシャルで、直訳すると”凄く硬い豆”ですね。標高が高いエリアで育成するコーヒーチェリーは、昼夜の大きな寒暖差によりゆっくりと成熟し、実がギュッと締まり風味特性も特徴的なものとなる傾向にあります。
エチオピア
コーヒーの木のルーツとされるエチオピアでは、収穫したコーヒー豆に含まれる欠点豆の数によって、欠点豆の少ない順に、G1,G2,G3,G4~G8という格付けがなされます。エチオピアの代表的なコーヒー産地といえばシダモ地区ですが、当店で取り扱うことの多いイルガチェフェはこのシダモ地区の中でも特に標高の高い2000~2500mの高地にあります。
ケニア
同じアフリカでもケニアではまた異なる格付けとなります。スクリーンサイズによってAA,A,B,Cとグレード分けされます。大き過ぎるものはやはり低評価となります。
インドネシア
アジアの主要なコーヒー産地であるインドネシア。こちらも欠点豆の少ない順に、G1,G2~G5という等級に選別されます。インドネシア諸島の中で産出されるコーヒーの中で日本人にとってもっとも有名なのはマンデリンかもしれません。ただしこのマンデリンという名称がどのコーヒーを指すのかにも諸説あり、それをもって高品質なコーヒーと言えるかどうかは微妙なところです。 当店ではスマトラ島のリントン地区で栽培されるアラビカ種G1のコーヒー豆を使用しています。
他にも、多くのコーヒー生産国があり、各国の基準によって格付けがなされています。
【認証制度】
コーヒー豆そのものに対しての評価基準とは別に様々な認証制度も存在しています。
認証制度はコーヒー品質についての評価基準ではなく、それを取り巻く環境やその取引手法などについて制度的に取り決めているものです。代表的な認証制度についてご紹介します。
フェアトレード (https://www.fairtrade-jp.org/)
特に開発途上国といわれる国々でコーヒーなどの農作物の生産に関わっている人々の生活水準は消費国と比較して著しく低いのが実情です。そしてその産物の価格は投機対象として取引されるものもあり相場によって激しく変動しており、それが産出国の方々の生活を不安定なものとする一つの要因です。フェアトレードでは、小規模農家が生産組合を結成し、生産能力を高め、労働に対する正当な対価を得る為の交渉力を持ち、定められた「フェアトレード最低価格」の行使により得られた利益により生活を安定させ、学校や病院など地域社会全体の持続的な発展を目指す取り組みです。
コーヒー焙煎店がこの認証マークを使用するには、本来は麻袋単位での仕入れが前提となりますが、実態はどうでしょうね。
レインフォレスト・アライアンス (https://www.rainforest-alliance.org/ja/)
森林破壊や気候変動、労働環境の改善など、環境問題と社会問題の解決に向けての取り組みです。自然保護を重視し、森林環境と農業の持続性と発展を目指した認証制度です。コーヒーにおいては、シェードグロウンコーヒー(日陰栽培)といわれる、熱帯雨林の様々な樹木や生物の多様性を維持した中で木陰で栽培されるコーヒーもその一環です。当然、収穫などの作業効率は低くなりますが、サステナビリティの観点からも注力され、、社会・経済・環境のすべての面の向上を図るために様々な取り組みが行われています。
SDGsが注目される昨今、企業のサステイナブル投資の一環も担っているように見受けられます。
オーガニック(有機JAS)(http://www.organic-cert.or.jp/)
こちらが一番聞きなれた認証制度かもしれません。化学的な肥料や薬品を使用せず、土壌を用いた農業生産方法です。遺伝子組み換え技術を使用しないことも要件となります。
日本においてはJAS法に基づき、「有機・オーガニック」の表示は登録認証機関による認証を受けた食品のみが表示することができます。生産者・輸出入業者・販売者、それぞれの立場で認証制度における要件が異なります。
特に生産者においては、該当する圃場が2~3年化学肥料や禁止された農薬を使用していないこと前提に、講習や認証申請、実地検査など少なからず費用と労力を要します。この点において公平性に疑問を呈する意見も見受けられます。
【ブランド】
ブランドとはなんぞや?という話になると、様々な解釈と意見が交錯してしまうので、ここでは「差別化を意図して付けられた名称」と定義して、その事例を見ていきます。
ブルーマウンテン:ジャマイカのブルーマウンテンエリアで栽培・収穫されたコーヒーの名称で、希少性から非常に高値で取引されるコーヒー豆です。シングルオリジンのみならず、ブルーマウンテンブレンドとしても高級ラインナップとなります。
このようなブランドを確立したブルーマウンテンを輸入すること自体が利権化している側面もあるように思います。
ピーベリー:コーヒーチェリーの種であるコーヒー豆は、通常一つのチェリーの中に1対として2つ入っています。それが枝の先端部に生るチェリーの中で1つだけとなることがあります。これを集めたものがピーベリーです。ピーベリーはその希少性から比較的高価格帯で取引されます。鶏卵でも稀に黄身が二つ入っているものがあり、物珍しさから双子の卵として販売されることもありますが、これと同様に、希少であることがその品質の裏付けになるかというとそうでもない、というのが私の見解です。
コピ・ルアク:インドネシアに生息するジャコウネコの糞の中にあるコーヒーを集めた「コピ・ルアク」という超高級なコーヒー豆があります。インドネシア政府も価値を認めている希少な特産物ですが、模倣品が溢れていたり、動物虐待の観点からの問題が指摘されるなど、その価値について見直す動きもあります。典型的な珍品の部類であるというのが私の考えです。
モカ:古典的な喫茶店においてはまだまだ存在感のあるモカ。モカはイエメンにある港の名称です。紅海を挟んでエチオピアのあるアフリカ大陸東部の対岸にあるイエメンはコーヒーの貿易港として長い歴史を持つ国です。その港で取り扱われるエチオピアやイエメン原産のコーヒー豆は「モカ」と名付けられ根強い人気があります。それらにインドネシア産のコーヒー豆を混ぜた「モカ・ジャバ」という名称もあります。
ブランドについてはこれといった定義があるものではないので、様々思惑とともに情報として飛び交っていますので、リテラシーが問われます。
以上、コーヒーについての基本的なことを簡単に書き出してみました。
それでも充分に長くなってしまいましたので、今回はここまでにしたいと思います。