8回目の冬を越えて
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2月14日。
里山の奥にある自宅を出て、海岸線へ向かう道すがら。
車窓に映る景色には、まだ冬の空気が残っていますが、足元の草花や木々の先端に、春の気配がそっと芽吹き始めているのを感じます。
世の中が甘い空気に包まれるこの日は、ボタリズムにとって、少し背筋が伸びる節目の日でもあります。
おかげさまで、ボタリズムコーヒーロースターは設立から8周年を迎えました。
飲食や小売の生き残りが厳しいと言われるこの時代に、ましてや都市部から離れたこの場所で、8回もの冬を越えられたこと。
それは決して「成功」と胸を張れるようなものではなく、日々の積み重ねと、支えてくださった皆様のおかげで「生かされてきた」という、静かな感謝に尽きます。
「Botarhythm(ボタリズム)」
Botanical(植物的な)とRhythm(律動)を合わせたこの造語には、植物が太陽や月のサイクルに従い呼吸するように、一杯のコーヒーを通じて、人も自然のリズムの中で暮らしたい、という願いを込めました。
8年という月日は、長いようで短く、そして激動でした。
世界は目まぐるしいスピードで変化し、効率や数字、大きな声が正義とされることも多い世の中です。
けれど、ロースタリーのある南房総の時間は、どこか違う流速で動いているように感じます。
そんな時の流れごと自分に取り込んでみたい、と考えたことも、この地に暮らすと決断した理由の一つでもあります。
2019年の秋、オープンに向けて少しずつ手をかけ始めていた焙煎所のある建物は、大型台風で大きな被害を受けました。
それでも少しずつ修繕を重ね、ロースタリーとしての第一歩を踏み出した矢先、翌年からはコロナ禍が世界を覆いました。
長いトンネルを抜け、ようやくロースタリーに看板を掲げ、不定休ながらもほぼ毎日オープンできるようになった今があります。
小さな小さなお店だからこそ生まれる、お客様との近い距離感。
オンラインストアやふるさと納税を通じて、まだ見ぬ遠方の方へコーヒー豆と共に「気持ち」をお送りする日々。
そして、共に成長できるパートナー店舗様の存在。
8年前、開業当初にこれらの中で予測していたことなど、正直なところ何一つありませんでした。
ただ、いただいた機会に対して、その時の自分にできる限りのことを真摯に尽くす。
今日まで続けてこられたのは、その泥臭い積み重ねの結果でしかありません。
もちろん、平坦な道ばかりではありませんでした。
予想だにしなかった困難や、自分が大切にしている価値観を守るために、異なる考えを持つものとの間に距離を置く決断も必要でした。
それは決して簡単なことではありませんでしたが、この場所で「ボタリズム」というアイデンティティを守り抜くためには、避けられない道でもありました。
そうして迎えた8年目の今日。
大きな流れに無理に抗うわけでもなく、かといって飲み込まれるわけでもなく。
ただ静かに、その場所で形を保ち、目の前の景色を映し出す「一滴の雫」のように。
小さくとも深く信頼される生業(なりわい)を、これからも続けていきたいと思います。
9年目のボタリズムも、一歩ずつ、自分のペースで自分らしいリズムで歩みを進めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
感謝を込めて。
Botarhythm Coffee Roaster
元沢 信昭