パック内のコーヒー粉に、直接浄水を注ぐ
不織布パックを容器の中に置き、口を開けたまま、パック内のコーヒー粉に向かって浄水をゆっくり注ぎます。
注ぎ口の位置を少しずつずらしながら、粉全体を均一に湿らせるイメージで注いでください。
パックの上から水を被せるのではなく、粉に直接水を行き渡らせることが、後の撹拌ムラを防ぐコツです。
パートナー店舗向け
レシピガイド
本書では、ボタリズムで実践しているレシピの基準を、パートナー店舗の皆さまに向けてまとめました。
ここに記した分量や温度、時間はあくまで出発点です。
最終的な判断は、オーナー様ご自身の味覚でなさってください。
「私はこのテイストが良い」と感じた一杯を、お客様へご提供していただく。
その主体性こそが、お店の一杯を育てていくと考えています。
もちろん、当店の経験からお手伝いできることがあれば、いつでもご相談ください。
基準をお示しすることと、お店で仕上げていただくこと。
この二つの姿勢で、本書を一緒に使っていただけたら嬉しく思います。
分量、湯温、挽き目、抽出時間。
ボタリズムで日々積み重ねてきた出発点を、数値と手順で明示します。
最終的な一杯の設計は、お店ごとに異なって然るべきです。
基準を起点にして、お店の味として育ててください。
ハンドドリップコーヒーは、ご注文を受けてから豆を挽き、一杯ずつ抽出することを基本としています。
コーヒー豆は、挽いた瞬間から香気成分が揮発しはじめます。
注文ごとに挽くというひと手間が、お客様の一杯に香りと味を、もっとも確かな形で届ける方法です。
あわせて、抽出レシピの遵守、湯温管理、注ぎ方の安定によってカップクオリティを担保します。
挽きたての鮮度と、レシピの再現性。
この両輪が、ボタリズムのハンドドリップの基本です。
豆15gに対して湯180〜200mlを基本とします。
この範囲内であれば、お店の味設計に合わせて調整していただいて構いません。
当店では180mlで、豆の個性と密度をしっかり感じていただく設計にしています。
ご提供するカップサイズによっても最適な湯量は変わりますので、基本の範囲を起点に、お店の一杯としてもっとも美味しいと感じる量を見つけてください。
低めの温度(80℃寄り)で抽出すると、苦味や渋みが抑えられ、円やかで穏やかな口当たりに仕上がります。
深煎りの豆を80℃で抽出すると、そのキャラクターがよく表れます。
高めの温度(90℃寄り)では、豆の香りやコクが出やすくなります。
同じ豆でも、湯温によって表情が変わります。
お店の雰囲気やお客様層に合わせて、ベストな一杯を設計してください。
総抽出時間2分〜2分30秒で落ちきるレシピを基本としています。
この時間内に収まっているかどうかは、挽き目が適切かを判断する目安になります。
抽出時間が長すぎる場合は挽き目を粗く、短すぎる場合は細かく。
特に3分を超えてくると、雑味として感じられる成分まで抽出されてしまう「過抽出」のリスクが高まります。
3分を一つの目安として、それ以上長くならないよう挽き目で調整してください。
各ステップの意味を理解したうえで、流れるように進めてください。
豆を挽く前に、設定した温度でお湯を沸かします。
先にお湯の準備を始めることで、挽きたての豆をすぐに抽出に進められます。
ドリッパーにペーパーをセットし、お湯でリンスします。
ペーパー臭を洗い流し、同時に器具を温めるためのプロセスです。
サーバーに落ちたお湯は、ドリップ前に必ず捨ててください。
カップにもお湯を注ぎ、温めておきます。
お湯の準備ができたら、豆を挽きます。
コーヒー豆は、香りのカプセルです。
挽いた瞬間から、その中に閉じ込められた風味が揮発していきます。
この香りをどのように液体に閉じ込めるのか。
これが、以降のすべての抽出プロセスに共通するポイントです。
少量のお湯を、粉全体が湿るように注ぎ、30秒ほど待ちます。
湯量は30ml以下で構いません。
大切なのは、粉全体を均一に湿らせること。
蒸らしは、コーヒー粉に含まれるガスを抜き、お湯が粉の成分をしっかり引き出せる状態をつくるための大切なプロセスです。
渦を描くように、ゆっくりと粉全体にお湯を注ぎます。
1投目との合計で100mlになるよう注いでください。
2投目のお湯が落ちきる前に、40mlを追加で注ぎます。
こちらも、渦を描くように粉全体へ。
3投目のお湯が落ちきる前に、残りの40mlを注ぎます。
同じく、渦を描くように粉全体へ注ぎます。
サーバーからお湯がすべて落ちきるのを待ちます。
カップを温めていたお湯を捨て、抽出したコーヒーをカップに注いで完成です。
1杯ずつドリップすることを基本としつつ、同じ種類のコーヒーの注文が2杯、3杯と同時に入った場合には、バッチブリューで対応できます。
お客様をお待たせせずにサーブするための、実用的な方法です。
| 杯数 | 豆量 | 湯量 |
|---|---|---|
| 2杯分 | 25g | 360ml |
| 3杯分 | 30g | 540ml |
1杯ドリップが15gのため、2杯なら30g、3杯なら45gと思われるかもしれませんが、バッチブリューでは意図的に豆量を少なくしています。
一度に抽出する粉の量が増えることで抽出効率が高まり、少ない豆量でも十分な濃度のコーヒーが抽出できるためです。
粉の量が増える分、お湯が落ちきるまでの時間は1杯ドリップより長くなります。
3分を超える場合もありますが、まずは一口味を確認してみてください。
雑味や渋さに違和感を感じたときに、挽き目を少し粗めへ調整していただければと思います。
時間はあくまで目安で、最終的にはご自身の味覚を信じてください。
その他(湯温、注ぎ方など)は、基本の抽出手順と同じです。
濃いめに抽出したドリップコーヒーに、70℃ほどに温めたミルクを合わせる一杯。
ミルクに負けないコクを出すため、抽出比はアイスハンドドリップと同じ15g/120mlを基本とします。
豆の個性が、ミルクを通しても輪郭を保つ設計です。
抽出は蒸らしを含めて2投で仕上げます。
少ない湯量で濃度をしっかり引き出すことが、ミルクと合わせたあとの余韻を決めます。
設定した温度でお湯を沸かします。
ドリッパーにペーパーをセットし、お湯でリンス。
このときのお湯はサーバーへ落とし、サーバーも一緒に温めます。
続けて、カップにもお湯を注いで温めておきます。
カフェオレはミルクで冷めやすいため、器を十分に温めておくことが一杯の完成度を左右します。
十分に温まったら、サーバーとカップのお湯を捨てます。
サーバーは次の抽出で再び使うため、水滴が残らない程度に振って整えます。
豆を挽いてドリッパーにセットします。
挽いた瞬間から香りは揮発しはじめるため、すぐに抽出へ進んでください。
少量のお湯を、粉全体が湿るように注ぎ、30秒ほど待ちます。
ホットドリップと同様、粉全体を均一に湿らせることが大切です。
渦を描くように、ゆっくりと粉全体にお湯を注ぎます。
蒸らしと合わせて合計120mlになるよう注いでください。
2投で仕上げることで、ミルクに負けない密度のドリップが得られます。
お好みの方法で、ミルクを70℃ほどまで温めます。
これ以上の高温にするとミルク本来の甘さが飛びやすくなるため、触れて「熱い」と感じる程度を目安に、温めすぎないようにしてください。
抽出したコーヒーを、温めておいたカップへ注ぎます。
続けて、温めたミルクを静かに注いで完成です。
コーヒーとミルクの境目がゆっくりと解けていく、その色のうつろいも、お客様へお渡ししたい一幕です。
関東では気温が20℃を超えるとアイスコーヒーの注文が増えはじめ、25℃を超えるとさらに注文率が高まります。
季節の変わり目に合わせた準備が、スムーズなオペレーションにつながります。
アイスコーヒーは、差別化を図りやすいメニューでもあります。
市場にはグレードの低い豆を深煎りにして加熱殺菌したリキッドコーヒーを使用している店舗も多く、丁寧に抽出したアイスコーヒーはそれだけで大きな違いを生みます。
本章では以下の3種の抽出方法を紹介します。
それぞれに特性があり、店舗のオペレーションや提供スタイルに合わせて使い分けていただけます。
注文ごとに抽出するためロスが出ません。
一方で抽出に時間がかかるためオペレーションの負荷は高め。
当店ではこの手間を反映してホットコーヒーの価格に80円を加算しています(2026年4月現在)。
前日に仕込んでおくことで、注文時の作業を最小限に抑えられます。
熱を加えないため酸化のスピードが遅く、仕込みに向いています。
メニュー名としての訴求力もあります。
濃縮した水出し液を希釈して提供します。
ミルクをたっぷり加えてもコーヒーの風味が薄まらない、しっかりとしたカフェオレに仕上がります。
1週間以内の保存が可能。
熱いコーヒーを氷で急冷することで、酸化させることなく一気に引き締め、スッキリとした口当たりと輪郭のはっきりとした風味に仕上げます。
氷が溶けてコーヒーに加わることを計算したうえで、ホットより少ない湯量・濃い設定で抽出するのがポイントです。
氷はグラスやカップのサイズによって量が変わります。
溶けた氷がコーヒーに加わることで、適切な濃度に仕上がる設計です。
設定した温度でお湯を沸かします。
ドリッパーにペーパーをセットし、お湯でリンス。
アイスコーヒーの場合、サーバーにはこの後氷を入れるため、リンスのお湯はサーバーに落とさないようにしてください。
カップやボウルなど別の容器の上でリンスし、そのお湯は捨てます。
サーバーに氷を150〜200g入れ、リンスを終えたドリッパーをサーバーの上にセット。
この氷がコーヒーを急冷し、同時に溶けてコーヒーの一部となります。
豆を挽いてドリッパーにセット。
挽いた瞬間から香りは揮発しはじめます。
すぐに抽出に進んでください。
少量のお湯を粉全体が湿るように注ぎ、30秒ほど待ちます。
ホットドリップと同様です。
渦を描くように、ゆっくりと粉全体にお湯を注ぎます。
蒸らしと合わせて合計120mlになるよう注いでください。
サーバーを軽く回して氷にコーヒーをなじませ、さらに冷やします。
氷ごとすべてグラスに注いで完成です。
急冷されたコーヒーは酸化することなく一気に引き締められ、スッキリとした口当たりと輪郭のはっきりとした風味のアイスコーヒーとなります。
コーヒー粉を水に長時間浸けることで、ゆっくりと成分を抽出する方法です。
熱を加えないため、酸味や苦味が穏やかで、まろやかな口当たりに仕上がります。
仕込みから抽出完了まで24時間を要するため、予想杯数を想定して、複数のボトルでの仕込みも検討します。
以下のいずれかの器具を使用します。
ハリオ製など、コーヒー粉を水中に保持する構造のボトル。
粉が浮く心配がなく扱いやすい器具です。
専用ボトルがない場合は、だしパック等の不織布で代用できます。
目の細かい業務用のものを推奨します。
しっかりとした素材であれば1枚で、薄手のものは2重にして使用してください。
業務用だし袋、業務用だしこし等の製品が使用できます。
コーヒー豆を細かめに挽きます。
当店では細挽きを推奨していますが、微粉が気になる場合は中細挽き寄りに粗くして調整してください。
挽いた粉を器具にセットします。
水出しコーヒーボトルの場合は、ボトルのフィルターケースに粉を入れます。
不織布パックの場合は、だしパック等に粉を入れ、口をしっかり閉じます。
コーヒー粉を浄水に沈めます。
ボトルの場合はボトルに浄水を注ぎ、フィルターケースをセット。
粉は構造上、自然に水中に保持されます。
不織布パックの場合は、パックを容器の浄水に沈め、落とし蓋などで重しをして粉が完全に水没した状態を保ちます。
コーヒー粉が完全に水に浸った状態で、冷蔵庫で24時間保ちます。
ボトルの場合はフィルターケースを引き抜いて取り出します。
搾る必要はありません。
不織布パックの場合は、パックを取り出します。
抽出後のパックは水分を含んで重くなり、引き上げる際に破袋しやすい状態です。
底や口元の破れに重々注意し、両手で支えながら丁寧に取り出してください。
取り出したパックは、しっかりと搾って抽出液を取りきります。
清潔な容器に移し、冷蔵保存。
3日以内に消費してください。
コーヒー豆を細かめに挽きます。
当店では細挽きを推奨していますが、微粉が気になる場合は中細挽き寄りに粗くして調整してください。
挽いた粉をだしパック等の不織布に入れます。
目の細かい業務用のものを推奨します。
しっかりとした素材であれば1枚で、薄手のものは2重にして使用してください。
標準サイズのだしパックの場合は、ここで口をしっかり閉じます。
業務用の大きいサイズのだしパックを使用する場合は、口を開けたまま次の手順へ進んでください。
標準サイズのだしパックの場合:口を閉じたパックを容器の浄水に沈めます。
業務用の大きいサイズのだしパックの場合:パックを容器に入れ、パック内のコーヒー粉に直接浄水を注ぎます。
スプーン等でコーヒー粉をしっかりかき混ぜ、粉全体に水が行き渡ったら、パックの口を閉じます。
いずれの場合も、落とし蓋などで重しをして粉が完全に水没した状態を保ってください。
豆量が多い分、浮き上がりやすくなります。
確実に水没していることを確認してください。
コーヒー粉が完全に水に浸った状態で、24時間抽出します。
保管環境は常温もしくは冷蔵庫を選択してください。
常温の方が抽出が進みやすく、より濃度が出やすい傾向があります。
気温や衛生面の状況に合わせて、適切な環境を選んでください。
24時間が経過したら、パックを取り出します。
抽出後のパックは水分を含んで重くなり、引き上げる際に破袋しやすい状態です。
底や口元の破れに重々注意し、両手で支えながら丁寧に取り出してください。
取り出したパックは、しっかりと搾って濃縮液を取りきります。
清潔な容器に移し、冷蔵保存。
1週間以内に消費してください。
不織布パックを容器の中に置き、口を開けたまま、パック内のコーヒー粉に向かって浄水をゆっくり注ぎます。
注ぎ口の位置を少しずつずらしながら、粉全体を均一に湿らせるイメージで注いでください。
パックの上から水を被せるのではなく、粉に直接水を行き渡らせることが、後の撹拌ムラを防ぐコツです。
清潔なスプーンや長柄のヘラ等を使い、パック内のコーヒー粉と水を全体的に撹拌します。
底や角に粉のダマが残りやすいため、底面まで届くようにかき混ぜてください。
コーヒー粉のすべての面が水と接触する状態を作ることが、均一な抽出につながります。
撹拌が不十分だと、抽出ムラや濃度不足の原因になります。
撹拌が完了したら、パックの口をしっかりと閉じます。
豆量200gのパックは浮力で浮き上がりやすいため、落とし蓋やカトラリー等を重しとして使用し、パック全体が完全に水中に保たれた状態を確保してください。
パックの一部でも水面から出ていると、その部分は抽出されません。
24時間の抽出中、最後まで水没した状態が維持されるかを確認します。
濃縮液を以下の割合で希釈してご使用ください。
お好みによって割合を調整していただいて構いません。
| メニュー | 濃縮液 | 割り材 |
|---|---|---|
| アイスコーヒー | 50ml | 浄水 100ml |
| 濃厚アイスカフェオレ | 50ml | ミルク 100ml |
濃縮液を使用することで、ミルクをたっぷり加えてもコーヒーの風味が薄まらない、しっかりとしたカフェオレに仕上がります。
基準をお示しすることと、お店で仕上げていただくこと。
この二つの姿勢で、一杯を育てていきましょう。
Botarhythm Coffee Roaster
Roaster Nobuaki Motozawa